備忘録メモ書き

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社会人一年目終わるらしい 振り返り。

社会人一年目が終わるみたいです。

  早いもので、社会人一年目が終わりそうです。2020年卒で化学系メーカーの研究職に配属され、かなり基礎研究よりのテーマを担当することになったのが6月。

 私の最初のテーマは有機合成で汎用される、とある反応のブラッシュアップでした。正直な感想を言うと、つまんなそうだと思いました。しかし、一年目が終わる今よく考えてみると、汎用反応って安くていい条件少ないよねと考えるようになりました。この視点を得られたことが今年の収穫。

 例えば芳香族求電子置換反応(SEAr)。農薬だと芳香環に塩素とか硫黄とか入れることが多いです。プロセス的にはFriedel Crafts反応をよく使いますが、当量の金属沈殿が出てきたり、溶媒にジクロロメタン使ったりと実はあんまりいい条件じゃないです。酸性条件とか酸化反応に汎用されるジクロロメタンですが、工業的には結構嫌われたりします。高いしリサイクル率低めだし毒性あるしもう散々な言われよう。

 さて、私のテーマですが、実はすぐに変わることになります。6月当初、尖っていた(?)私は、「こんなテーマはつまらない、もっと安くていい反応があるに違いない」と考えてバイアルにこっそり別の反応を仕込み始めます。そうこうしていると、ある程度目的の反応が進行している系を見出し、今のテーマとなりました。

 しかしそこからは苦労や課題の連続。まず初め、溶媒のダメ出しを食らいました。基本的にワンポットでやりたいという視点に立つプロセス化学では、全ステップで溶媒は統一したほうがいいです。そこで、後工程のことを考えて、溶媒を変えてから検討すると、収率は70%→20%とかになってしまいました。結構絶望。これが8月あたりだったと思います。

 溶媒を変えてから収率を上げるための検討に2021年の2月までかかりました。実際には、収率を20%→70%にするのはそこまで時間はかかりませんでした。しかし、あと20%をあげることが本当に難しかった。反応をやっていくうちに、原料が消失しきる前に副生成物が生成してきてしまうことが収率低下の原因であることはわかりましたが、解決の手がわからず手探り状態が続いたことを覚えています。原料消失前に副生成物が生じるのはよくあることですが、やっぱり単純ながら解決は難しい。

 結果としてこの問題も解決することができました。劇的に反応を制御する添加剤を見出し、この出来事がものすごく自信になりました。

 現在は、次段階の反応の検討を行っています。ここでも苦労しそうですが。何か新しいことが見つかるといいですね。

 振り返ると、一変換を約一年間やってたわけですね。恐ろしい。。しかし、一年目で新しいテーマを提案して、きちんと結果を出せたことは本当によかったなと思っています。

 一年間社会人をやって得た教訓としては

1. 基本的なことに課題あり

2. とりあえずやってみる

の二点です。1. に関しては、テーマを深掘りするにつれて実感していきました。溶媒の安全性、試薬の値段、副生成物の有無などを考えると、研究室で汎用される反応もプロセス的には課題を抱えていることが多いなと感じます。真に究極の反応は、あらゆる溶媒に使えて、副生成物が生じない触媒反応だと今のところは考えています。酸化反応なら酸素を酸化剤に、還元反応なら水を還元剤にできることが理想。溶媒の統一性を考えると、特定の溶媒でしか進行しない反応はいまいち。

2. は修士時代に口を酸っぱく言われてきたことです。実験系の研究者はやらなきゃわかんないことが多いです。私は頭で考えてからやるタイプだと思っていますが、とりあえずやるっていうのも大切なんだと再確認しました。とりあえずやってみたからこそ、新しいテーマを見つけ、その問題を解決できたのですから。

 来年度は今年得た教訓を生かして、新しい結果を出せたらなと思っています。頑張りましょう。