takiです。2020卒新入社員として農薬メーカーに就職し、一か月が経過しました。以下追記にて感想など。
今年度は新型コロナウイルスの影響で、世の新入社員研修は大パニックの様相を呈しています。私の学部時代同期は一か月在宅になっている人もいるなど、今後どうなっていくのか予想できません。なんとなく6月あたりには首都圏含め出社できるような気もしますが。
さて弊社では、一応注意しながらという形で変則的な研修を行う運びとなりました。具体的には東京での研修や、地方への移動を含む研修はすべて中止になり、いきなり研究所・工場での研修が開始しました。会社の情報を公開してしまわないよう少しぼかしながら書くことにします。
初めに工場の見学や仕組みを知る研修が約二週間行われました。やはり工場研修では、ラボとの違いを嫌でも実感させられます。
まずよく言われるスケールの違い。私の修士時代のラボでは、使っても1Lの3つ口フラスコが最大でしたが、工場スケールでは10000Lなどの反応釜になります。よくある大スケールで仕込んだら全然いかなかった、というのはこのスケールでは絶対に許されません。仕込み量も~kmolとか見たことない単位。修士の時から思っていましたが、使える反応ってこういうでかいスケールでも耐えうる反応で、酸素に弱いとかグローブボックスで仕込まないとうまくいかない反応はこのスケールの前では使い物にならないなと思います。
そして考えることの多さ。ただ収率よくとれました、ではダメなのが工業スケール。試薬の値段や当量・温度は徹底的に検討しますし、攪拌速度、攪拌効率、分液性、ろ過性、品質...と、検討事項はラボのスケールとは比較になりません。NMRが綺麗ならOKというアカデミックとは異なり、NMRでも見えないくらい少量の不純物も追いますし、金属反応を用いて作る原体では、残存金属量も追うことがあります。それくらい品質は大切な事項になります。
安全対策も研究室と比較になりません。防毒マスクの種類も使い分けますし、静電気が起きないような工夫も至る所になされています。プロシージャーの中でも安全に対する項目がずらりと並んでいます。ラボではちょっと危ないという事項でも、その一万倍のスケールでは人が死に至るほどの大事故につながってしまう恐ろしさを感じます。
よく、研究職を目指す修士学生が「工場は嫌だ」と言いますし、恥ずかしながら自分もその一人でした。しかし実際に工場を見学すると、とんでもない知識や経験を持った工場の人たちによって生産は支えられていることがわかります。彼らは研究員の人が知らないことを数多く知っていますし、本当に尊敬に値する人々ばかりです。私は研修が終われば研究員として働くことになりますが、工場特有の知識も兼ね備えた人材になれるよう、彼らとのコミュニケーションも大切にしていきたいなと思うのでした。